二次創作小説「水平線の、その先へ」

当ブログは二次創作小説(原作:水平線まで何マイル?)を掲載しています。最初から読みたい方は1章をクリックしてください。

10章 大地を離れて 天翔ける

【閑話休題・給電着陸10】

前に触れましたが、2008年の初期PCゲームでは、朋夏が飛行機に乗ってビューンと空を飛ぶような明確な飛行シーンが出てきません。ボックスに表示される文章はあるんですが、原作のちょっと残念だった部分の一つです。クライマックスとなる航空部との対決では…

10章 大地を離れて 天翔ける(7)

そのあと水面ちゃんの突撃取材が始まり、集合写真を撮影し、宇宙科学会の一人一人にインタビューをして回った。取材が一段落したのは、太陽が午後を回ってからのことだ。 名香野先輩は、宇宙科学会の存続についてお墨付きをくれた。先輩は予選会開催の決定後…

10章 大地を離れて 天翔ける(6)

無我夢中で走った。最初に飛行機にたどり着いたのは、フライトを終えたばかりで一番近くにいた花見だ。その後に、整備担当の航空部員たちが集まる。滑走路の端から走った僕は、三番手だ。白い飛行機の残骸が近づくにつれ、走って紅潮しているはずの顔から血…

10章 大地を離れて 天翔ける(5)

航空部と僕たちが、滑空場の端で向かい合って並んだ。部員数の差は圧倒的で、航空部は二十人に近い。 審判団に促され、古賀会長と花見が握手をする。その後に、コイントスだ。会長が勝ち、後手を選んだ。後から飛ぶ方が相手の距離を見た上で飛行できる分、有…

10章 大地を離れて 天翔ける(4)

航空部は、宇宙科学会の後で審判のチェックが入る機体の確認に、余念がない。部員数人が、機体の周りで作業をしている。指示を出しているのは副部長だ。花見は少し離れたところで腕を組んだまま、じっとその作業を見ていた。 「どうだい、調子は」 後ろから…

10章 大地を離れて 天翔ける(3)

整備場を出た。次に見つけたのは会長だ。 航空部の連中とも格納庫とも離れて、ひとり滑走路の奥の芝にたたずんでいた。その姿がどこか寂しげに見える。 風が会長の髪をたなびかせていた。そして、あの虚無のような空色の目をしていた。どこか遠くを見ている…

10章 大地を離れて 天翔ける(2)

決戦の舞台は、航空部の滑空場だ。僕たちにとってはアウェイとなるが、割り込んできたのは僕らであって、文句は言えない。 七時に教官と二人を起こし、トラックに飛行機を積み込んだ。到着したのは八時で、機体を降ろし、全員で組み立て作業をした。 朋夏も…

10章 大地を離れて 天翔ける(1)

7月23日(土) 東の風 風力2 晴れ 旧校舎のグラウンドの東の水平線から、朝日が昇る。早朝の海風は、心地よい湿度と涼しさを運んでいた。あと数時間であの太陽が、焼き消してしまうに違いないが。 「朝……だね」 隣に立ったのは、名香野先輩だ。湖景ちゃん…