二次創作小説「水平線の、その先へ」

当ブログは二次創作小説(原作:水平線まで何マイル?)を掲載しています。最初から読みたい方は1章をクリックしてください。

1章 果てない海と 空の青

【閑話休題・給電着陸1】

(↑ 本編とは関係のない人ですが別作品で同じ学校の人) 1章を完読していただき、ありがとうございました。小説内時間でまだ3日、全字数の6%ほどしか進んでいませんが、大半の方がここまでで脱落されると思います。 ずいぶん字数を使ったのに飛行機の話が…

1章 果てない海と 空の青(9)

僕たち宇宙科学会員三人はこの日初めて、会長の口からまっとうな台詞を聞いた気がした。 そうだ、大切なのは場所じゃない。ここで育まれた四人の強い連帯感こそが、かけがえのない価値を持つ活動の成果なのだ、と。 朋夏と湖景ちゃんの表情に、ぽっと生色が…

1章 果てない海と 空の青(8)

朋夏に促されて席についた委員長は、ようやく自分を取り戻したようだった。部室をぐるりと見回し、そして僕と目が合った。 「平山君……」 「はい、ご無沙汰しております」 「ご無沙汰って……一日しか経っていません!」 「す、すみません!」 確かに言葉の選択…

1章 果てない海と 空の青(7)

6月3日(金) 北東の風 風力2 雨 今朝、気象台が梅雨入りを発表した。例年より一週間近く早いが、空梅雨の可能性があるという。家の近くの田んぼは、大丈夫だろうか。 放課後に朋夏と部室に顔を出すと、湖景ちゃんが最新型の手のひらサイズのミニコンで、…

1章 果てない海と 空の青(6)

文科系学会棟の外に出て、軽く空気を胸に吸い込んだ。こんな好天の日に、部室の掃除を真面目に手伝う気にはなれない。僕は中学校を卒業した時、やる気と根気を少年時代と一緒に置いてきてしまった。 中庭の大銀杏を囲む石段に、腰を下ろした。太陽が、相変わ…

1章 果てない海と 空の青(5)

教室に入ると、今度はポニーテールが猛烈な勢いで突進してきた。「猪突」という言葉が、頭に浮かぶ。最近、脳内が妙に漢語的なのは、会長の影響だろうか。 「ねー、大変なんだけど!」 「それはひょっとして宇宙科学会の解散の話だったりするのか?」 「あ、…

1章 果てない海と 空の青(4)

6月2日(木) 南東の風 風力1 晴れ きょうも朝から、初夏のような力強い陽光が差した。校門をくぐり玄関を抜け靴箱に外靴をしまい、教室に向かおうとした時、不意に呼び止められた。 「おーい、平山!」 クラスメイトの上村実が、手を振って追ってきた。 …

1章 果てない海と 空の青(3) 

携帯GPSで位置を調べると、会長は旧校舎を出て坂道を東側に上がった先、灯台の付近にいるらしい。 グラウンドの雑草を踏みながら、海を振り返った。世界はとても穏やかで、とても美しい。海も空も二十世紀の終わりに比べれば、ずっと澄んでいるという。 …

1章 果てない海と 空の青(2)

「あのさー……午後の授業、サボってよかったのかな」 芝生に寝転んだまま、朋夏が気だるい声を上げた。 「なんだよ、いきなり」 「だって気になるじゃない。先生怒ってないかなーとか、単位大丈夫なのかなー、とか」 「きょうは会長が部活動ってことで、きち…

1章 果てない海と 空の青(1)

内浜地方気象台発表 午前6時の気象概況 6月1日(水) 西の風 風力4 快晴 「蒼穹」って、こんな空のことか。 芝生に仰向けになって、まあるいドームみたいな青空を眺めているうちに、好きな小説で昔覚えた言葉が頭に浮かんだ。 ここ内浜市はもともと雨の…