二次創作小説「水平線の、その先へ」

当ブログは二次創作小説(原作:水平線まで何マイル?)を掲載しています。最初から読みたい方は1章をクリックしてください。

13章 重ねた努力に 裏切られ

【閑話休題・給電着陸12】

給電着陸が一回空きました。というのも一日ほぼ一回のペースで更新しながら、十年ぶりに原稿の校正作業を並行して行っておりました。 話が後半に入ってから三ルートを同時進行させていたことは前に説明しましたが、改めて読み返すとイベントが重なるため進行…

13章 重ねた努力に 裏切られ(10)

体は疲れてはいるが、神経は妙に高ぶっている。きょうもすぐには眠れそうになく、僕はなんとなく研修室の屋上に上がった。漆黒の夜空に天の川が横たわり、星群れが呼吸するように煌めいていた。 涼みがてらに星を見上げていると、後ろからきいっと扉を開ける…

13章 重ねた努力に 裏切られ(9)

夜空には、手を伸ばせば届きそうな星が無数に瞬いていた。 機体の計器チェックは夕方までに終わり、仕上げの組立作業は十時過ぎに終わった。僕は機体の重心測定などの作業をみんなに任せ、遅い風呂を浴びることにした。 着替えとタオルを持って部屋を出ると…

13章 重ねた努力に 裏切られ(8)

午前中に市民滑空場で飛行訓練をした朋夏が、格納庫に現れた。昨日に引き続いて、水面飛行のシミュレーション訓練に取り組むためだ。 「ピッチ調整のプログラム修正が終わってないけど、なんとか飛行ルートの感覚だけでもつかんで欲しい」 花見の要望に、朋…

13章 重ねた努力に 裏切られ(7)

7月30日(土) 西の風 風力3 雨 カレンダーがまた一日めくられ、スケジュールはXデーに向けて、着々とカウントダウンを刻んでいく。八月七日の本番まで、あと一週間あまりだ。焦りがないと言えば、ウソになる。だが時間の少なさを嘆く時間もない。 花見か…

13章 重ねた努力に 裏切られ(6)

その晩は、二組に分かれて作業をした。僕と会長、名香野先輩は飛行機の軽量化と組み立て。朋夏たちは、機体外のシミュレーターを使った飛行訓練を行った。朋夏は機体から降りたシミュレーションの方が成績がいいようだが、それでも成功は五割に届かないらし…

13章 重ねた努力に 裏切られ(5)

この日の夕食メニューは、ビーフストロガノフだった。 「姉さんのお陰で、料理ができました」 湖景ちゃんはうれしそうだ。憧れのお姉さんと、初めて作った料理。食卓に並んだ各自の皿に、食欲をそそる褐色のシチューが盛られている。 「うわーっ、おいしそう…

13章 重ねた努力に 裏切られ(4)

この日の訓練の結果、機体の完成を一日でも急ぎ、機体の実データをシミュレーションに乗せることが急務となった。機首上げ時の飛行特性がわからければ、朋夏の操縦桿の特訓も、意味が半減する。 「部品の削りこみはまだ足りないけど、バランス調整に配慮しな…

13章 重ねた努力に 裏切られ(3)

「あたし、やってみる。なかなか楽しそうじゃない」 口元は笑っていたが、目は真剣だった。 「教官の意見はどうですか?」 「恐らく大会は予選会と逆で、他の機体の大半がこの機体よりも軽いはずだ。プラットフォームも機体の性能と離陸速度を考えると、少し…

13章 重ねた努力に 裏切られ(2)

午後になって、湖景ちゃん謹製のピッチ角自動調整プログラムと、シミュレーターの飛行機への搭載作業が完了したと聞き、格納庫に戻った。 「こちらがパイロットの入力した信号。高度と速度もモニターします。で、これがピッチ角の自動調整システム。バッテリ…

13章 重ねた努力に 裏切られ(1)

7月29日(金) 北の風 風力3 晴れ 空はきょうも青い。日差しはさんさんと降り注ぎ、生きとし生けるもののすべてを祝福しているかのようだ。 「じゃあ、きょうもがんばって二人で作業をしましょう、平山先輩!」 格納庫で、湖景ちゃんがニコニコしながら言…