二次創作小説「水平線の、その先へ」

当ブログは二次創作小説(原作:水平線まで何マイル?)を掲載しています。最初から読みたい方は1章をクリックしてください。

2章 はばたく鳥に 憧れて

【閑話休題・給電着陸2】

無事2章が終わりました。やっと前振りが終了です。普通の小説なら1章以内で処理すべき内容ですね。この小説は17章あるので適正割合か……とも思いますが、書き手が勝手に盛り上がっても読み手はついてきません。もちろんゲームシナリオなら何の問題もないスピ…

2章 はばたく鳥に 憧れて(8)

「ですが、さすがに今回は……これを作って飛ばすのは、無謀だと思います。あなたを見て、そう思いました」 この人は、真剣に空を愛している。僕たちのやろうとしていることは、単なる会長の思いつきであり、その動機は部活動の存続という軽いものだ。空に挑戦…

2章 はばたく鳥に 憧れて(7)

僕は呆然として、倉庫の木箱を見つめていた。会長は、言い出したら聞かない人だ。ただし、いざとなったら最後の選択として、学会をやめるという手もある。 今までも意味不明の活動は多かったが、今回はピカ一だ。有人の飛行機作りとなれば、「責任が怖くてや…

2章 はばたく鳥に 憧れて(6)

正直言うと、あのトラックに乗っていたのはせめて完成した飛行機であって欲しい、と思っていた。もちろんコンテナに飛行機など入らないが、折りたたんだ翼を広げれば人が乗れるようなタイプの機体だ。しかしここにあるのは、断じて飛行機ではない。ただの木…

2章 はばたく鳥に 憧れて(5)

「宮前……宮前、きょうは休みか?」 昼休みが終わっても、朋夏の姿は教室になかった。体調が悪いんだと思います、と先生にフォローしたのは僕だ。朋夏には、ゆっくり休んでもらいたいと思う。それに睡眠不足は、立派な体調不良だ。サボリではあるが、ウソでは…

2章 はばたく鳥に 憧れて(4)

6月8日(水) 北東の風 風力1 曇り 珍しかったのは朝、校門の百メートルほど手前で、朋夏に追いついたことだ。朋夏と僕は家が近所で、家を出る時間もそれほど差がないが、朋夏は遅刻の心配がないのに走るようにバス停に行くのが日課なので、いつも朋夏が…

2章 はばたく鳥に 憧れて(3)

6月7日(火) 北の風 風力3 雨 「おはよー、空太。ねえ、なんか考えてきた?」 教室に入ると、また朋夏が真っ先に駆けよってきた。 「いや……特に思い浮かばないな」 「そんなことでいいの、空太! あたしたちの部が解散になっちゃうっていう非常事なのに……

2章 はばたく鳥に 憧れて(2)

会長は、グライダーについての簡単な説明を始めた。まず、大きく三種類あるという。一つはモーターを回して自力で空に上がり、滑空飛行に移るもの。MG、俗にモグラと呼ばれるタイプだ。 機体重量に八百五十キロという制限があり、燃料エンジンを搭載してい…

2章 はばたく鳥に 憧れて(1)

6月6日(月) 北西の風 風力2 曇り あの嵐のような金曜日から、三日がたった。この週末、僕は宇宙科学会に関しては、何もしていない。 放課後に購買部でパンを買ってから部室に行くと、ソファで珍しい男が漫画を読んでいた。 「上村……何やってるんだ?」 …