二次創作小説「水平線の、その先へ」

当ブログは二次創作小説(原作:水平線まで何マイル?)を掲載しています。最初から読みたい方は1章をクリックしてください。

7章 鎖を断ち切る 闘いは

【閑話休題・給電着陸7】

作品の魅力を語る時に欠かせないピースに、深崎暮人さんの美麗なイラストがあります。アニメの色のベタ塗りと少し違い、水彩画を思わせる淡いタッチで、人物や空や海や雲を描いています。発売当時はこのイラストも話題になり、ゲーム店でいわゆる表紙買いを…

7章 鎖を断ち切る 闘いは(10)

10 高級そうなスーツに身を包んだ男が扉を開け、一礼して入ってきた。僕たちも思わず立ち上がって、その大会役員という男にあいさつしようとして顔を上げ……言葉を失った。湖景ちゃんもそうだ。ぽかんと口を開けたまま、声が出そうで出ない。 「き……教官?」 …

7章 鎖を断ち切る 闘いは(9)

9 学校に着き、中央執行委員会室に向かう。部活を一生懸命していなかった今までは、日曜の学校に来たことはなかった。グラウンドや体育館では運動部が走り回り、吹奏楽部の練習する演奏が校内に響いているが、生徒の往来はほとんどない。見飽きたはずの学校…

7章 鎖を断ち切る 闘いは(8)

8 7月10日(日) 西の風 風力5 晴れ 久々の休日。僕は朝八時に目が覚めたが、もう一眠りを決め込んだ。休日の二度寝くらい、幸せな瞬間はない……そう思って夢の世界に戻りつつあった時、僕は母さんの声で現実の世界へと引き戻された。 「空太あ。まだ寝て…

7章 鎖を断ち切る 闘いは(7)

7 僕たちはその後、着陸した機体を、協力して駐機場まで運んだ。花見も手を貸してくれた。その後で、教官が全員に集合をかけた。 「宮前、落ち着いたか? では、今回の飛行の反省会をするぞ」 一同がなんとなく、居住まいを整える。 「誰でもいい。何か気づ…

7章 鎖を断ち切る 闘いは(6)

6 僕たちの作った飛行機が、順調に滑走路を走り出している。いよいよテイクオフだ。ここまでは期待で胸が熱くなっていたが、急に不安に襲われた。本当に飛ぶのか。本当に安全なのか。思わず、拳を握っていた。 右隣で教官が、じっと飛行機を見つめている。…

7章 鎖を断ち切る 闘いは(5)

5 いよいよだ。一か月あまり、文字通り心血を注いで作ってきた飛行機が、大空に飛び立つ日がやってきた。 主翼を外した飛行機を、トラックで滑空場に運ぶ。トラックの助手席には当然のように会長が座り、僕たちは飛行機と一緒に荷台に乗った。滑空場で組み…

7章 鎖を断ち切る 闘いは(4)

4 7月9日(土) 北西の風 風力3 快晴 朝の新聞に「内浜市役所職員、大トラで大暴れ」という記事があった。夜の繁華街で乱闘騒ぎを起こし、警察沙汰になったという。酔いが醒めた後の弁解が「市民との応対でストレスがたまり深酒をした」だそうだ。これっ…

7章 鎖を断ち切る 闘いは(3)

3 「さ、ヒナちゃんの体調も心配だし、きょうはお開きにしよー。帰りの道すがら、君たちにジュースでもおごってあげることにしようか」 「え、いいの? 古賀さん」 「もちろん! 委員会への賄賂で得点を稼いでおくのも、組織の長の務めだからねー」 「い………

7章 鎖を断ち切る 闘いは(2)

2 朋夏がランニングに出たので、僕が機体を操作することになった。エンジンカバーを外し、給電線をモーターにつなぐ。機体によじのぼり、計器が設置されてさらに窮屈になったコックピットに体をおさめた。 「平山先輩、聞こえますか?」 気がつくと、計器の…

7章 鎖を断ち切る 闘いは(1)  

7月8日(金) 北西の風 風力3 晴れ 期末試験が終わった。午後から一週間ぶりに、部活が始まる。 この四日間、僕は朋夏以外の宇宙科学部員と誰にも会わず、連絡も取らなかった。試験の手ごたえはというと、前回の中間試験と似たりよったり、という印象だ。…