二次創作小説「水平線の、その先へ」

当ブログは二次創作小説(原作:水平線まで何マイル?)を掲載しています。最初から読みたい方は1章をクリックしてください。

8章 きらめく星に 見守られ

【閑話休題・給電着陸8】

原作のゲームでは飛行機の理屈やモーターなどの技術的な部分を、キャラクターが説明する場面がいくつも挿入されています。私は航空工学には疎いですが、素人目には力が入っており、物語にリアリティーを持たせたいと制作スタッフが勉強したか、経験者や助言…

8章 きらめく星に 見守られ(10)

7月20日(水) 北西の風 風力1 晴れ きょうは終業式だ。いつもより長めの朝礼が行われ、ホームルームで成績表と、休み中の注意事項が伝達される。全員で教室の掃除をし、午前中ですべての作業が終わると、僕は朋夏と一緒に旧校舎へと向かった。 きのうはあ…

8章 きらめく星に 見守られ(9)

7月19日(火) 南の風 風力2 曇り 日曜日の夕方には会長が、フライ・バイ・ラジオ・システムに必要な部品と、どのような手段を講じたのか知らないが、航空部から強奪したらしい古い操縦桿とペダル、壊れた計器パネルを届けてくれた。まずはシステム構築を…

8章 きらめく星に 見守られ(8)

7月17日(日) 南の風 風力1 晴れ 「フライ・バイ……ラジオ?」 翌日の朝。僕たち全員は作業の前に、格納庫に集まった。そこで名香野先輩から出た提案と発想は、素人の僕たちには驚くべき内容だった。 「操舵のための索や滑車って、結構な重さがあるのよ。…

8章 きらめく星に 見守られ(7)

7月16日(土) 北西の風 風力2 快晴 予選会まで、あと一週間。きょうは白鳥の、二回目の試験飛行の日だ。 今回は滑空場に着いてからも、入念にモーターテストを繰り返した。初飛行の高揚感はなくなり、僕たちは整備に集中した。今回の飛行で問題が見つかれ…

8章 きらめく星に 見守られ(6)

7月15日(金) 南西の風 風力1 快晴 きょうの三時間目が物理だった。僕がそうっとテストを開くと、「三十二点」という数字が見えた。ひどい点数だ。だが赤点でないことは、間違いない。これで全教科、超低空飛行ながら、残らず赤点を踏まずにクリアした。…

8章 きらめく星に 見守られ(5)

部室には、朋夏と湖景ちゃんがいた。二人ともパイプ椅子に深く腰かけ、沈んだ様子でうつむいている。 「湖景ちゃん……名香野先輩は?」 「連絡が取れません……昼に教室に行っても、いなくて」 やはりショックが大きかったのだろう。何とか見つけて、元気づけて…

8章 きらめく星に 見守られ(4)

僕が教室ですぐに上村に問いたださなかったのは、頭の中で上村の行動を理解しようと、努めていたからだ。しかし、何も考えがまとまらない。上村もきょうは、僕と一度も顔をあわせようとしなかった。というより、教室全体が上村に対して、腫れ物に触るような…

8章 きらめく星に 見守られ(3)

7月13日(水) 南西の風 風力1 晴れ 朋夏と名香野先輩が元気になったのはうれしいが、事態はそれほど好転していない。機体の技術や知識、パイロットの技量などで航空部と僕らには雲泥の差があり、ULPだけで勝てるような甘い世界では決してない。それは琵琶…

8章 きらめく星に 見守られ(2)

7月12日(火) 南西の風 風力2 快晴 きょうは航空部の練習を見に行く日だ。授業が終わり、朋夏と名香野先輩と三人一緒に、電車に乗り込んだ。 つり革につかまる名香野先輩の顔色は、今ひとつ冴えず、道中には一言も発しなかった。トルク調整の失敗をずっと…

8章 きらめく星に 見守られ(1)

7月11日(月) 風弱く 晴れ 朝、教室に入ると、上村がまた難しそうな顔で、腕組みをしていた。 「どうした、元気がないな」 「平山か。聞いたぞ。飛行機が完成を見たそうじゃないか」 「もう知っているのか」 「情報は時間が命だからな。それにしても、驚き…