二次創作小説「水平線の、その先へ」

当ブログは二次創作小説(原作:水平線まで何マイル?)を掲載しています。最初から読みたい方は1章をクリックしてください。

6章 仲間と試練を 乗り越えて(4)

4 7月1日(金) 北東の風 風力1 曇り 昨日の作業が気になって、授業はあまり覚えていない。 教官は、このままでは飛行機は飛ばせない、と断言した。名香野先輩も、何かに気づいている。だが、手がかりがない。 いや、待て。 名香野先輩は、飛行機を外か…

6章 仲間と試練を 乗り越えて(3)

3 6月30日(木) 北の風 風力3 雨 いよいよ梅雨の終わり、という感じの激しい雨になってきた。天気予報の言う通り、季節の進行は、例年よりずっと早い気がする。 きょうは初めてモーターの試運転をした。台にモーターを固定してプロペラと計器板を接続し…

6章 仲間と試練を 乗り越えて(2)

2 6月29日(水) 北西の風 風力1 曇り 名香野先輩が、きょうから作業に復帰した。昨日の進捗状況については、湖景ちゃんからメールで聞いていたらしい。到着してすぐにコックピットの中を覗いていたが、「うん、いい具合になると思う」と満足そうだった。…

6章 仲間と試練を 乗り越えて(1)

1 6月28日(火) 南西の風 風力1 晴れ 朝から久々に、青空が覗いた。きょうは気持ちよく作業ができそうだ。 放課後になるのも待ち遠しく、朋夏と部室に行く。モーターとバッテリーを運ぶためだ。届け先が旧校舎だったら問題なかったのだが、旧校舎には常…

【閑話休題・給電着陸5】

ようやく飛行機作りが軌道に乗りました。展開の遅さがずっと気になっていましたが、ここまで来ると筆者もひと安心です。 とはいえ後から読み返すと、構成の問題も見えてきます。4章の最後に「キャラ贔屓ではなく」と書いてその通りなのですが、途中参加の陽…

5章 僕らは前に 進み出す(8)

8 6月27日(月) 北東の風 風力1 雨 きのうからの雨が、相変わらず降り続いている。場所によっては豪雨で、洪水注意報も出ているようだ。二週間予報によると、六月の東葛地方の雨量は平年並みだが、例年より太平洋高気圧の勢力が強く、七月上旬には梅雨明…

5章 僕らは前に 進み出す(7)

7 6月26日(日) 北の風 風力3 雷雨 六月最後の日曜日は梅雨前線が勢いを盛り返して、あいにくの雨となった。太平洋高気圧と大陸からの冷気の押し合いが激しくなった証拠で、こうなると梅雨明けが近い。せっかく朋夏が順調に初飛行をしたのに、きょう飛べ…

5章 僕らは前に 進み出す(6)

6 6月25日(土) 南西の風 風力3 晴れ いつもは放課後に旧校舎へと直行するのだが、きょうは教官の指示で、朋夏と一緒に内浜市民滑空場に向かった。飛行機が完成すれば操縦や滑空などの動きをチェックする必要も出てくる。僕が全体を目配りする立場として…

5章 僕らは前に 進み出す(5)

5 6月24日(金) 南東の風 風力2 曇り 名香野先輩は火曜日以降、毎日作業に参加してくれている。五時からという日もあったが、十分にありがたい。それに先輩がいない時でも作業が進むようになってきた。 一つは、僕と湖景ちゃんが名香野先輩のやり方から…

5章 僕らは前に 進み出す(4)

4 6月23日(木) 北の風 風力3 曇り 朝。珍しく上村が難しそうな顔をしている。だが僕の姿を見ると、教室からテラスの方に出るように誘ってきた。 「時に噂によると、なにやら宇宙科学会が中央執行委員長を抱きこんで怪しげなことを始めたそうなのだが、…

5章 僕らは前に 進み出す(3)

3 6月21日(火) 風弱く 雨 以前は遊ぶだけだった放課後の時間が、それどころではなくなっている。あれほど苦労するのが嫌だと思っていたにもかかわらず、ほんのひと月前までの楽だった宇宙科学会を懐かしむ感情がわかない。 僕は会長の魔法にかかっている…

5章 僕らは前に 進み出す(2)

2 6月20日(月) 東の風 風力5 雨 月曜日は部室で作業というのが基本方針だ。朝から雨が強く、急に風向きが変わる荒れ模様の天気で、旧校舎に行かないでいいのは助かった。 昨日はほぼ一日仕事になり、フットペダルをコックピットに固定して、胴体の骨格…

5章 僕らは前に 進み出す(1)

1 6月19日(日) 北西の風 風力2 曇り 朝から雲が多いが、梅雨空特有の黒い空模様ではなく、時々日光がさしこんでくる。この分なら、きょうは雨に降られないだろう。土日が梅雨の中休みになっているおかげで、市民滑空場で訓練する朋夏のスケジュールが順…

【閑話休題・給電着陸4】

4章終了です。最後に衝撃の展開となりましたが、この辺まではまだ原作も調子が良かったんですけどね……。会長の謎ぶりも少しずつ明らかになっていきます。 ようやく元気娘の水面ちゃんが登場しました。宇宙科学会でない生徒でちょっとかき乱す存在は、原作で…

4章 途切れた絆を 縒り直し(9)

「ちょ、ちょっと待ってください。えーと、姉妹で、名前が違う。これは、いろいろと事情があるかと思うのですが……あの、双子で学年が違うというのは、どういうことなのでしょうか」 声が思いっきり、裏返ってしまった。 「あーソラくん、コカゲちゃんは学年…

4章 途切れた絆を 縒り直し(8)

6月18日(土) 西の風 風力3 晴れ 週末は久々に夏のような日差しが覗いた。ただ、蒸し暑くなるのがこの時期の欠点だ。格納庫には冷房がないし、風通しもそれほどよくない。朋夏は午前中の授業が終わると「この天気なら、上空は気持ちいぞー!」と騒ぎなが…

4章 途切れた絆を 縒り直し(7)

6月17日(金) 北の風 風力2 にわか雨 梅雨らしい、降ったりやんだりのはっきりしない天気が続く。僕らの作業も天気同様、一進一退だ。せっかく作った部品も、教官から「接合が甘い」「遊びが少なすぎる」と、次々と注文が舞い込む。 それだけ言うなら部品…

4章 途切れた絆を 縒り直し(6)

6月15日(水) 北東の風 風力2 曇り 僕が食堂で昼食を終えて廊下を歩いている時、ずっと先の階段踊り場でたたずむ一人の女子生徒と目が合った。髪が薄い茶色で、三つ編みのお下げ髪二本を、頭の後ろで結わえている。記憶にない生徒なので気のせいだと思っ…

4章 途切れた絆を 縒り直し(5)

6月14日(火) 風弱く 曇り 湖景ちゃんは一日休んだだけで、翌日には旧校舎で元気な姿を見せた。「ご心配をおかけしました」とぺこりと頭を下げられて、かえって恐縮した。 二人で作業を始めてほどなくして、尾翼につく舵の作業で行き詰まった。僕が教官に…

4章 途切れた絆を 縒り直し(4)

6月13日(月) 北の風 風力1 雨 週が明けて月曜日、梅雨前線が延びてきて、学校は雨となった。 けさ湖景ちゃんからメールが来て、学校を休むと伝えてきた。軽く疲れが出たそうだ。そう言えば土曜日曜と、格納庫で働きづめだった。 会長からのメールで、僕…

4章 途切れた絆を 縒り直し(3)

時は瞬く間に過ぎ、時計の針が正午を指した。最初の工程が終り、一息つく。 「平山先輩、名香野先輩、お疲れ様でした。お昼にしましょう」 湖景ちゃんが、いつみても小さなお弁当箱を開いた。毎朝、自分で作ってくるらしい。しかし、こんな弁当箱では胃の半…

4章 途切れた絆を 縒り直し(2)

これは驚きだった。まず委員長の知的な雰囲気が、工場に似合わない。湖景ちゃんと履歴が一緒、というのも面白い偶然だ。東葛市は工場が多いから、高校によってはそういう親の生徒が多いと聞いてはいたが。 「そうなんですか? 私の母もそうなんです。名香野…

4章 途切れた絆を 縒り直し (1)

6月12日(日) 北西の風 風力3 晴れ 翌朝も、窓から夏のようなまばゆい光が差し込んでいた。母親は、僕が日曜日なのに早く起きてきたことに、驚いたようだ。「ちょっと部活で。きょうも遅くなるから」と言い残し、僕は朝食もそこそこに家を出た。 僕と朋夏…

【閑話休題・給電着陸3】

前章最後に3章で「飛行機作りに入ります」と書きました。あれウソでした。改めて読んでみたら湖景ちゃんが部品を並べただけで、まったく組み立てておりません。なんてこったい。伏してお詫び申し上げます。しかしここまでペースが遅いとは。実に先が思いやら…

3章 ゼロから始まる 挑戦で(8)

地球が反転するほど驚くとは、このことだろう。今のがコクられる、という奴なのだろうか。というか、なぜ委員長が僕に? 「げっ」 カエルを蹴っ飛ばしたような声を出したのは朋夏だ。朋夏が隣にいながら何を言い出すんだろうか、この委員長様は。 「いえ、そ…

3章 ゼロから始まる 挑戦で(7)

6月11日(土) 南東の風 風力1 晴れ 昨日の夜は、珍しく雷雨になった。今朝になると雨は上がっていたが、道路にはかなりの水が残っていた。 土曜日の授業は、午前中で終わりだ。朋夏と湖景ちゃんと一緒に旧校舎に行こうと思っていたら、放課後に担任の先生…

3章 ゼロから始まる 挑戦で(6)

放課後になると、雨が降ってきた。朋夏は旧校舎に行くため湖景ちゃんを誘いに向かったが、僕は会長の指示通り、部室に顔を出した。会長は先に来ていて、きょうはパソコンに向かっていた。 「あ、ソラくん。情報収集どうだった?」 「え?」 「え、じゃないよ…

3章 ゼロから始まる 挑戦で(5)

6月10日(金) 北の風 風力4 曇り 翌日は、軽い筋肉痛を抱えての登校だった。 あのあと、僕は木箱の分解にとりかかった。翼の一部や金属索など、かなり大きな部品もあるため、傷つけないように持ち上げたり並べたりするのに手間取った。筋肉痛は、その後遺…

3章 ゼロから始まる 挑戦で(4)

会話を聞かれていたなら、逆に話は早い。内浜行きの電車に乗ると、僕はつり革につかまりながら、会長に勝算を尋ねてみた。 「うーん、正直難しいかもねー」 なら、なんであんな条件を承認したのでしょうか、会長? 「やっぱり全国大会となると、大学や社会人…

3章 ゼロから始まる 挑戦で(3)

古賀会長は先に旧校舎に行くと言って、委員会室を出ていった。 「平山君、お茶でもどう?」 委員長は、また冷たいウーロン茶を注いで、勧めてくれた。 「正直……こう来るとは思わなかったわ」 僕が再び席に着くと、委員長が呟いた。 「僕も驚いているんです」…